全米を彩る多様なストリートギャングの歴史と実態――それぞれの成り立ちと独自の縄張り、抗争の数々
アメリカのストリートギャングがたどった歴史と背景

アメリカには数多くのストリートギャングが存在し、さまざまな都市でそれぞれが長年にわたる抗争と縄張りの確立を経て現在の姿を形成しています。ロサンゼルスのBloodsとCrips、シカゴのGangster DisciplesやVice Lords、東海岸のLatin Kingsなど、地域ごとに発祥時期や社会的背景が異なるため、そのカルチャーやアイデンティティにも多様性が見られます。 アフリカ系アメリカ人コミュニティの貧困や人種差別、中南米系移民のアイデンティティと連帯感、あるいは移民社会におけるセーフティネットの代替として機能する“家族意識”など、社会構造や歴史的背景が深くかかわりあうことでストリートギャングは生まれました。彼らは決して単なる犯罪集団というだけでなく、音楽やファッション、グラフィティなどのアーバンカルチャーを育んだ一面も持っています。
一方で、多くのギャングが麻薬取引や銃犯罪などの違法行為を資金源とし、そこから抗争や暴力事件が頻発するため、治安当局からは危険視されています。特に、ロサンゼルスやシカゴ、ニューヨーク、デトロイトなどの大都市圏では、広大なエリアを分割するように各ギャングがコミュニティを支配していると言われます。ここでは、アメリカに存在する主なストリートギャングの成り立ちや特徴、活動エリアなどを順を追って解説していきます。
ロサンゼルス発祥の黒人系ギャング
Crips(クリップス)
成り立ち:
Cripsは1969年にレイモンド・ワシントンがロサンゼルス南部の高校周辺で始めた小さなストリートギャングが前身とされています。地域の若者同士が自衛目的や連帯感から集まったのが始まりという説もあり、当初は地元コミュニティを守るための組織要素があったとも言われています。しかし、徐々に暴力的な側面と犯罪活動が強まっていき、ロサンゼルス全域に枝分かれしていく過程で大規模化しました。
エリア:
主な拠点はサウスセントラル・ロサンゼルスを中心として、コンプトンやイングルウッドなどにも多数の「セット(支部)」が存在します。さらに、カリフォルニア州外にも活動が拡大しており、全米50州のほか海外にもCripsを名乗る集団が点在しているとの報告があります。
メンバー:
黒人系の若者が中心となって結成された歴史を持ちますが、近年は多様化が進んでおり、ラテン系や白人、アジア系のメンバーもいるとされています。その規模は推定で3万人以上とも言われ、全米各地のコミュニティで大小さまざまなセットが活動を行っています。
特徴:
Cripsは青色のバンダナや服装をシンボルカラーとし、ギャング・スラングやハンドサインなど独自の文化を持っています。主な収入源は麻薬取引や強盗、恐喝などであり、特に1970〜80年代にはクラック・コカインの流行によって大きな資金を得ました。また、敵対ギャングとの抗争に加えて内部的な対立も絶えず、セット間のまとまりは決して強固とは言えない点もCripsの特徴の一つです。
Bloods(ブラッズ)
成り立ち:
Bloodsは1972年頃、Cripsの拡大に対抗する形でいくつかの小さなストリートギャングが連合し、Piru Street Boysというグループを中心に誕生したとされています。Cripsとの抗争から自衛するために結束し、「Cripsに対抗する者たち」としてのアイデンティティを確立したのが最初の一歩でした。
エリア:
拠点はCripsと同様にサウスセントラル・ロサンゼルス、コンプトン、ワッツ地区などで、やはりカリフォルニア全域に「セット」が散在しています。Bloodsもまた全米各州や一部海外に支部を拡大し、地域コミュニティに根付いた独自の文化を維持しています。
メンバー:
アフリカ系アメリカ人が中心ですが、近年はCrips同様、人種や民族の壁を越えた多様なメンバーが加入しているケースが増えています。加えて、刑務所内でもCripsと対立を続ける一方で、ラテン系ギャングなどと協力関係を持つ場合もあり、複雑な連携が生まれています。
特徴:
Bloodsは赤色をシンボルカラーとし、ギャング・スラングではCripsとの対立を示す言葉遊び(BをCに置き換える、または逆)などが知られます。収入源は麻薬取引や恐喝が中心で、ヒップホップ文化とも結びつきが深く、多くのラッパーやアーティストがBloodsの背景を持つとされます。Cripsとの抗争はギャング抗争の象徴として全米的に知られ、多数の死傷者を出してきました。
ラテン系コミュニティを中心とするヒスパニック系ギャング
Sureños(スレーニョス)
成り立ち:
Sureñosはカリフォルニア州南部を中心に活動するラテン系ギャングの総称であり、実際には多数の小規模なストリートギャングやセットが連合している形態です。もともとカリフォルニア州の刑務所ギャングであるメキシカン・マフィア(La Eme)と強い結びつきを持ち、街中での利益を刑務所内の上部組織へ上納する構造があるとされています。
エリア:
主な活動地域は南カリフォルニア全域ですが、全米規模に拡散しており、特に中西部や南西部のラテン系コミュニティにも存在します。
メンバー:
メキシコ系を中心に、中央アメリカ系やその他のヒスパニック系移民の若者が多数所属します。アメリカ国内で生まれ育った2世・3世のメンバーも多く、家族ぐるみで代々ギャングに所属するケースも見られます。
特徴:
Sureñosは青色やネイビーを好む傾向があり、地域によっては異なる色を使用するセットも存在します。共通のシンボルとして“SUR”や“13”などのタトゥーを入れる文化があり、これはメキシカン・マフィアへの忠誠を意味するとされます。収益源は麻薬取引や強盗、密入国ビジネスなど多岐にわたり、暴力事件も頻発しているため、FBIや地元警察から厳重にマークされています。
Norteños(ノルテーニョス)
成り立ち:
NorteñosはSureñosと対立関係にある北カリフォルニアを拠点とするラテン系ギャングの総称です。刑務所内のNuestra Familiaというギャングとの結びつきが強く、Sureñosとの抗争は1970年代から続く長い歴史を持ちます。
エリア:
サンフランシスコやオークランド、サクラメントなど北カリフォルニアの都市部を中心に活動が確認されます。やはり全米各地に支部を広げており、中西部や北西部の都市でも勢力を持つ場合があります。
メンバー:
やはりメキシコ系移民やラテン系アメリカ人が多くを占めます。Norteñosのメンバーは地域社会に強く根ざしており、家族や親族同士の結びつきが強いケースが多いです。
特徴:
Norteñosは赤色をシンボルとし、“NORTE”や“14”(スペイン語でNの14番目を表す)などのタトゥーを入れる習慣があります。麻薬取引や武器密売が収益源で、Sureñosとの抗争はコントロール不能な暴力事件に発展することも少なくありません。刑務所内でも両者は厳しく対立し、暴動や殺傷事件が多発した過去があります。
18th Street Gang(エイティーンス・ストリート)
成り立ち:
18th Streetは1960年代後半にロサンゼルスのピコユニオン地区で結成されたラテン系ストリートギャングです。当初はメキシコ系移民が中心でしたが、後に多国籍化し、トランスナショナルなギャングへと拡大しました。
エリア:
ロサンゼルス市内のほか、全米各州やメキシコ、中南米の一部地域にまで勢力を広げています。特にエルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラスなどにも支部があるとされ、国境を越えたネットワークを構築しているのが大きな特徴です。
メンバー:
メキシコ系をはじめ、中南米の多様なバックグラウンドを持つ若者が加入。移民コミュニティの抱える貧困や差別、社会的孤立などがメンバー増加の背景にあると考えられています。
特徴:
18th Street Gangは別名“Barrio 18”や“M-18”とも呼ばれ、麻薬取引や武器密売、人身売買などを主な収益源としています。敵対組織は複数あり、MS-13との抗争は中米の治安悪化に大きく影響しているとの指摘があります。多様な人種が加入できる点が他のラテン系ギャングとの相違点であり、強制的なリクルートや若年層への脅迫などの報告もあるため、社会問題化している例が後を絶ちません。
MS-13(Mara Salvatrucha)
成り立ち:
1980年代、エルサルバドル内戦から逃れた難民や移民がロサンゼルスに流入し、その若者たちが地元ギャングから身を守るために結成したと言われています。“Mara”は中米のスラングで「ギャング」を意味し、“Salvatrucha”はエルサルバドル人を指す言葉に由来するといわれます。
エリア:
もともとはロサンゼルス周辺で活動を開始しましたが、アメリカ政府による大量の移民送還により、中米各国へ逆輸入の形でMS-13が拡散。現在ではエルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラスなどで勢力を大幅に拡大し、非常に暴力的な犯罪組織として国際的に知られています。アメリカ国内でも東海岸や中西部にまで進出しているとされ、FBIの注目度も高いです。
メンバー:
エルサルバドル系の移民やその子孫が中心ですが、近年は周辺国の移民やアメリカ生まれの若者も含まれるため、多国籍化が進んでいます。MS-13に加入するとほぼ一生抜けられないと言われるほど残忍かつ厳格な掟が存在し、強い恐怖と支配構造によって組織を維持している面があります。
特徴:
MS-13はタトゥー文化で有名で、顔面や全身にMSやサルバトルーチャを示すタトゥーを入れるメンバーも珍しくありません。大規模な麻薬取引や恐喝、誘拐、人身売買が収益源となっており、その暴力性から各国の治安当局に最も危険視されるストリートギャングの一つです。アメリカ政府もMS-13を国際犯罪組織とみなし、摘発に力を注いでいます。
シカゴを拠点とする中西部ギャング
Gangster Disciples(GD)
成り立ち:
シカゴのサウスサイドで1960年代に誕生したSupreme GangstersとBlack Disciplesという2つのグループが合併して、Gangster Disciplesが形成されました。創設者の一人Larry Hooverは刑務所に入れられた後も組織を遠隔操作し続け、強大な勢力に成長。
エリア:
シカゴ市内を中心に、イリノイ州のほか、中西部の複数州や南部の都市部にも勢力を広げています。特に公営住宅地区など貧困地域での活動が盛んで、銃犯罪や麻薬取引を牛耳っているケースが多く見られます。
メンバー:
主にアフリカ系アメリカ人の若者で構成され、全米で数万人規模に上るとも推測されます。刑務所内でも拡大を続け、一大ネットワークを形成していると指摘されています。
特徴:
Gangster DisciplesはFolk Nationというシカゴ系ギャングの連合に属し、対立する陣営としてPeople Nationがあります。主な資金源はやはり麻薬取引や恐喝ですが、他のギャングと同盟を結ぶ場合もあり、敵対・友好関係が複雑に変遷しているのが特徴です。シンボルとして6つ星のダビデの星などを使用し、Folk Nationの合言葉である“all is one”を掲げることもあると言われます。
Black Disciples(BD)
成り立ち:
Black DisciplesはGangster Disciplesと同じくシカゴのサウスサイドで1960年代に設立された黒人系ギャングです。初期にはDavid Barksdaleというカリスマ的リーダーが率いていた歴史があり、後にLarry Hooverの組織と一時期は統合しましたが、最終的には分裂を経て別々に活動しています。
エリア:
シカゴのEnglewood地区をはじめとするサウスサイドに強固な基盤を持ち、近年は市外や他州にも小規模拡散が見られます。
メンバー:
アフリカ系アメリカ人の若者が中心で、若年層の加入が多いのも問題視されています。特に低所得層のコミュニティでは、家族の崩壊や学校教育の不備などを背景にギャングに流れ込むケースが後を絶ちません。
特徴:
Black Disciplesは強い内部結束力と暴力性で知られ、ときにはGangster Disciplesと同盟関係を築く場合もありますが、多くは対立状態が続いています。Folk Nationに属し、麻薬取引や銃の売買を中心に収益を上げていると考えられます。シカゴ市内の銃犯罪や殺人事件の多くにBlack Disciplesや関連グループが関与していると疑われるケースがあるなど、社会問題が深刻化しています。
Vice Lords
成り立ち:
Vice Lordsは1950年代にシカゴの刑務所内で結成された黒人系ギャングで、市内のウェストサイド地域を中心に影響力を拡大してきました。多くのギャングが収監される刑務所内での組織化が始まり、出所後に街で勢力を拡大するという流れが一般的です。
エリア:
シカゴのウェストサイド地区が本拠地ですが、中西部や南部を中心に他州にも支部が存在します。
メンバー:
こちらもアフリカ系アメリカ人が中心で、各地域の下部組織(セット)ごとに人数や構成が異なります。大都市の公営住宅地帯を拠点にしており、子どもやティーンエイジャーが流入しやすい環境があると言われています。
特徴:
Vice LordsはPeople Nationに属し、Gangster DisciplesをはじめとするFolk Nationと対立関係にあります。シンボルとして5つ星を用い、赤や金色を好んで使用する傾向があります。収益源は麻薬取引や売春、恐喝などで、シカゴ市内の強力な組織の一つとして警察にマークされています。
ニューヨークや東海岸を中心とするその他のギャング
Latin Kings
成り立ち:
Latin Kingsは1940年代にシカゴでプエルトリコ系移民によって結成されましたが、その後ニューヨークや東海岸に大きく勢力を伸ばしていった歴史を持ちます。宗教的かつ民族的なアイデンティティを前面に打ち出す傾向があると言われ、ラテン系の誇りを強く掲げています。
エリア:
シカゴ発祥ながら、現在ではニューヨーク、ニュージャージー、コネチカット、フロリダなど東海岸一帯に広がりを見せています。刑務所内にも勢力を持ち、全米規模のネットワークを展開していると指摘されます。
メンバー:
プエルトリコ系やメキシコ系など、さまざまなラテン系移民がメンバーとして参加します。アメリカ生まれの2世・3世も多く、独自の文化や儀式的要素を持つため、カルト宗教的な側面を指摘されることもあります。
特徴:
Latin Kingsは金色や黒色をシンボルカラーとし、LKや5点の王冠のタトゥーを入れる文化があります。People Nationに所属し、Folk Nationとの対立構造がありながら、実際には地域ごとに同盟や抗争が変化する場合が多いです。麻薬取引や強盗、恐喝、さらに刑務所内での暴力事件など多岐にわたり犯罪行為が報告されています。
Trinitarios(トリニタリオス)
成り立ち:
ニューヨーク市の刑務所内で1990年代に誕生したドミニカ系ギャング。Riker’s Islandというニューヨーク最大の拘置施設で、ドミニカ共和国からの移民やその子どもたちを中心に結成されたとされています。
エリア:
主にブロンクスやマンハッタン北部で活動が活発で、ニューヨーク市内全域にセットが散在しています。また、アップステート・ニューヨークや隣接する州にも支部があるようです。
メンバー:
ドミニカ系移民が中心ですが、近年はプエルトリコ系や他のラテン系、アフリカ系アメリカ人などが加わる例もあります。刑務所ギャングとしてのルーツが強いため、メンバー同士の結束は非常に固いと言われます。
特徴:
Trinitariosは緑色をシンボルカラーとし、宗教的なモチーフやドミニカ共和国の国旗色を取り入れたタトゥーなどを特徴とします。麻薬取引や銃器密売が主な資金源であり、マチェーテ(大型の山刀)を使った暴力事件で注目を浴びたことから、残虐性が高いと恐れられています。近年、未成年を含む若年層が巻き込まれた凄惨な事件も報道され、ニューヨーク市警が取り締まりを強化しています。
その他の小規模・地方系ストリートギャング
ここまで紹介したギャングは全米規模、あるいは大都市で有名なものばかりですが、アメリカには数多くの地方系や民族コミュニティベースのギャングが存在します。例えば、ハワイやアラスカなど本土から離れた地域においても、小規模ながら独自の文化を持つギャングが確認されています。
アジア系移民のコミュニティでは、Tiny Raskal Gang (TRG)などのカンボジア系若者が中心となった組織や、Asian Boyzなどがロサンゼルスで活動しています。これらは他のギャング同様、家庭環境や貧困、人種差別などが原因で生まれたものであり、時に強烈な暴力や犯罪を伴うことがあります。
また、白人系ギャングとしては、刑務所内のAryan Brotherhoodや、ストリートではSKINHEAD系のネオナチ思想を背景とするギャングが一部地域で活動を見せています。しかし、これらは政治的・人種差別的な色彩を帯びる場合もあり、ヘイトクライムと結びついて社会問題となるケースもあるため、また別の角度からの分析が必要となります。
ギャング同士の抗争と法執行機関の取り締まり
アメリカのストリートギャング同士の抗争は、麻薬の流通権やテリトリー争いが主な原因です。そこに人種的・歴史的対立や刑務所内での派閥争いなどが加わり、時に複雑化します。Crips対Bloods、Sureños対Norteños、Gangster Disciples対Vice Lordsなど、代表的な対立構造は長期にわたり血で血を洗う抗争を繰り返してきました。
一方、FBIや各州警察、ATF(アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局)、DEA(麻薬取締局)などの法執行機関は、ギャングの取り締まりに莫大な予算と人員を投入しています。ギャング撲滅を目指す“Gang Task Force”が設置されたり、街頭カメラやパトロール強化、刑罰の厳罰化などの施策が進められています。しかしギャングはしばしばSNSやチャットアプリを使って連絡を取り合い、捜査の目をかいくぐって活動を続けるため、取り締まりは容易ではありません。
社会とギャング:文化的影響と再犯防止策
ストリートギャングは暴力や犯罪だけでなく、ヒップホップをはじめとするアーバンカルチャーに大きな影響を与えてきました。多くのラッパーやアーティストがギャング出身であったり、ギャング文化を歌詞やファッションに取り入れたりすることで、その存在が逆に商業化・メディア化される一面があります。
しかし現実には、ギャングの抗争による銃撃事件で命を落とす若者や、犯罪に巻き込まれる一般市民が後を絶たず、各コミュニティに深刻なトラウマを与えています。貧困や人種差別、教育格差などの社会的要因がギャング加入の背景にあるため、対症療法的な取り締まりだけでは再生産を止めることは難しいと言われます。
近年では、地域支援プログラムや若者向けの就労支援、ギャング離脱支援などが注目され、NPOや教会、コミュニティ団体が積極的に取り組んでいるケースが増えています。学校教育でもギャング抗争の被害を伝えたり、メンター制度を活用したりする試みが行われていますが、長年にわたる根深い構造的問題を解消するには依然として多くの課題が残るのが現状です。
まとめ:アメリカのストリートギャングが抱える現実と今後

アメリカのストリートギャングは、ロサンゼルスやシカゴ、ニューヨークといった大都市を中心に、数多くのグループやセットが存在し、それぞれが独自の歴史や文化、社会的役割を背負ってきました。Crips・Bloods、Sureños・Norteños、MS-13、18th Street、Gangster Disciples、Vice Lords、Latin Kingsなど、大所帯からローカルなものまで多岐にわたります。
彼らは麻薬取引や恐喝といった犯罪行為で収益を上げ、しばしば暴力的な抗争により多くの犠牲者を出してきました。刑務所内のパワーバランスや、人種・民族コミュニティの対立、貧困や差別による若者の流入など、複雑な要因が絡み合い、ストリートギャングは根強く存続しているのが現状です。
それでも、近年は取り締まりや地域支援によって一定の成果が見られる地域もあります。ギャング自体が分裂や分散化を進めるなかで、新たなコミュニティへの影響も懸念される一方、社会全体で包括的な解決策に取り組む姿勢が高まっているとも言えます。
今後の展望としては、IT技術やSNSの発達により、ギャングの情報共有や勧誘方法が一層巧妙化する恐れがあります。一方で、それらのデジタル情報を活用した捜査手法の発展も期待されます。治安維持と同時に貧困問題や人種差別、教育機会の拡充など、社会構造の改善が不可欠であることは議論を待たず、多角的なアプローチが求められているのです。
アメリカのストリートギャングは「犯罪集団」という表面だけでなく、歴史や文化的背景、コミュニティの問題が複雑に絡み合って成り立っています。彼らを取り巻く環境を理解し、根本的な社会問題に取り組まなければ、“ギャング”という存在は形を変えて残り続けるでしょう。